ここにいる君たちの中でカードワースを愛しているものはいるか。一年において一日として カードワースを起動しない日がないほど愛しているものはいるか。学校で授業を受けていて も、友達とおしゃべりしていても、恋人と満たされた時間を過ごしていても、貼り紙をクリ ックしたり、涙のうちに中止した冒険の続きが、頭の片隅に座を占めているものはいるか。 私がそうだ。私は私ほどカードワースを愛しているものは他にないと信じる。 目を閉じればそこに剣と魔法を携えた、堂々たる冒険者が立っている。私の手は冒険者の宿 の使い古されたカウンターを撫で、私の耳は古びた貼り紙が吹き込む風にかさこそと立てる 音を聴くことができる。古の迷宮に閉じ込められた魔獣を解き放ち、それを千年の呪縛から 解き放つ英雄の姿を、私は目にすることができる。君達はカードワースを愛しているか?  カードワースを起動していないときでさえ、カードワースと共にいるか? 己のPCを愛するものたちよ。その名前を心の中で唱えてみるがいい。貴重な時間を忘れ去る ほどそのメイキングに没頭し、実際にシナリオの中で反映されることのない、生まれ、瞳の 色、得意な武器、性格、悩み、酒癖の悪さをも設定した、愛すべきPCの名前を。君達は彼ら を愛しているか。愛していないものにとってはただ時間を潰すしかないとき、君達は彼らの おかげでニヤニヤしていられる。そんな時間を提供してくれる、君達によって想像され創造 されたPCを、彼らが君達を愛するよりも深く、彼らを愛しているか? 素材を提供してくれる者たち。君達への感謝を私は忘れない。始まりの三賢者がその素材の 調達に苦心したことを思えば。また黎明期の作者が、ただ絵柄が洗練されていないというだ けでろくにプレイングもされずF9されていたことを思えば。多くのシナリオが素材がない ばかりに製作を頓挫し、ハードディスクの中で完成を待ちながら化石化していった。その中 で生きていたNPCの無念さを思え。素材の提供者達よ。君達は多くの世界を救ったのだ。 シナリオの作者達よ。自分のシナリオを愛しているか? 自分のシナリオを皆に問うて胸を 張っていられるか? 地雷でも、佳作でも、凡作でも、力作でも、小手先の作品でも、同じ ように自分の子供達を愛しているか。その子達が泥水をぶちまけられ、嘲笑され、またある いは誰にも見向きもされず路傍にたたずんでいても、それでも我が子を愛しているか? 私 は君達が深くシナリオを愛していることを知っている。時間に忙殺され、ノートの一片に綴 った一欠けらのメモ、退屈な毎日から抜け出した妄想に見た光景。そこから大切に育んだシ ナリオ達を君達が愛さずにいられるだろうか? 君達はカードワースを愛しているか? 君達は新しいシナリオをダウンロードするとき胸躍 らせるか? 思いがけないクーポンの対応に胸をときめかせるか? 描かれる人物像に胸を 焦がされるか? シナリオの隙間に見える作者の苦悩を読み取って確信に胸を貫かれるか?  たった一通来た感想のメッセージに胸が一杯になるか? 私はカードワースを愛している。私はカードワースの愛が皆のうちに深まることを望む。冒 険が世界に満ちることを望む。カードワースが君達の一部になることを望む。愛が深まるも のだけがカードワースの真実を書いている。愛を拒絶させるようなアイデアは君達のファン タジーを殺す。愛されていないシナリオは惨めだ。愛されていないPCは惨めだ。愛を拒絶 させるもの。私はそれを玉座から引きずり落し、目を抉り取って追放する。羞恥も臆病も憎 しみも劣等感も私は己の心から抹殺する。 私はカードワースへの愛を私の手で証明する。君達はカードワースを愛しているか? 愛し ているなら、それを証明したか? 私は君達の真実を知っている。即ちカードワースを真に 愛したいと思っていることを。 三賢者の用意したカードワースの礎は永遠である。そして皆が育んできたカードワース世界 の木は永遠に枯れない。君達には見えるか? 永遠の花がその木に咲き乱れているのを。 君達はカードワースを愛しているか? 愛しているだろうとも!