「選択…そしてそれは」 千桜ソロ、夢オチ -------------------------------------------------------------------------- …それは、突然だった。 深夜に勉強をしてると、私のケータイが鳴った。 >千桜ちゃん。久しぶり。母さんたちはお仕事に一区切りがついたので明後日日本へ帰ってきます。 >今度は父さんがこっちで向こうの指揮をとるからまた一緒に暮らせます。 >千桜ちゃんに久々に会えるのを楽しみにしています。 母さんより そうか…帰って来るんだ。母さんたち。 私はいまいち実感がわかないままメールの文面を見ながら、そんな事を思っていた。 でも両親の事を考えていると私の感情は静かに怒りへと変わってきた。 何を今更。今までろくに連絡もしてくれなかったくせに! 勝手に向こうへ行ったと思ったらまた勝手に帰って来て! いつでも私は振り回される側だ。こっちの事を全然考えてくれない。 もう知るもんか。勝手に帰ってきてまた一緒に暮らそうだなんて虫が良すぎるんだ! 私は今のまま生活していくともう決めたんだ!もう母さんたちには頼らない! …そう思って、私はメールを返さなかった。 「………。」 しかし、そう突き放そうという思いは一時的だった。 いろいろと不安もある。あんな人たちだけれど法律上は親は親で、味方である事は変わりない。 学費は入学時に親が払い込んでいるから問題ないにしても、やっぱりいろいろとお金が要るわけだ。 咲夜さんは卒業したら海外へ行くと仰っているからバイトもいつかはなくなってしまうだろう。 別に働き口くらい見つけるけれど、親と一緒に住めばその問題はなくなる。 この年頃だと親と同居しているのが普通だし。この先の事を考えると安定した生活が出来るようにしたい。 けれど今の暮らしはとても楽しくて、私はそれを捨てたくない。 いつかなくなってしまうと分かっていても、その日が来るその時まで、一日でも長くここでの暮らしを続けたい。 …親の所へ帰るべきなのか、それとも今のままいるか。……私はどうすべきなんだろうか。 ………。 「はっ!?」 私は飛び起きて辺りを見回した。 「何だ…夢だったのか。」 ケータイにもそんなメールは入ってない。少し私はホッとする。 いつか考えないといけない事だけれど、今はまだ考えなくてもいいんだ…と。 さあ、今日からまた一週間が始まるのか。 キュッと後ろ髪をくくって朝食にしようと階下へ降りると、綾崎君が居た。 「おはよう。」 「あ、千桜さんおはようございます。そういえば千桜さん宛てに海外からお手紙が来ていますよ。」 「え?私に?」 「はい。…これです。」 いやいや、まさかそんな事は…。 綾崎君から手紙を手渡されると私は封を切って中身を読む。 >千桜ちゃん。久しぶり。母さんたちはお仕事に一区切りがついたので明後日… 「千桜さん、ひょっとしてこれって…」 「どうしよう…。」 恐れていた問題は、現実のものとなって現れた。 完